『自由と恩寵』の全体が私に訴えかけるのは、生きることが、神と人との「交わり」のプロセスに他ならないということである。人間の救いにおいて神の恩寵が人間の自由を先導する場合もあれば、人間が神を求め、神がそれに応える場合もある。神は人間の自由を「出し抜き」、神の恩寵を拒否する人の魂の中にすら、忍び込むことができる。神と人との交わりのあり方は、一つひとつがユニークである。人間の自由のわざと思われがちな信仰においても、そこで働いているのはやはり、神が私をとらえ、私が神をとらえ返す、神と人との「交わり」である。神との「交わり」を通して「三位一体の交わり」そのものの中に向かう救いの道が、本書に鮮やかに描き出